静岡県は日本茶の産地として広く知られています。しかし、静岡の日本茶といっても、産地はいくつかに分かれており、それぞれに個性があります。今回はそのなかでも、本山茶、掛川茶と並ぶ静岡三大地域ブランド茶の一つである、川根茶の魅力を紹介します。川根茶の魅力を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
別格の高級茶とされる川根茶
川根茶は黄金の水色とさわやかな香り、そして凛とした渋みが特徴の日本茶です。使用される主な品種は、やぶきた、山の息吹、こうしゅん、おくひかりの4つです。川根茶の起源は定かではありませんが、1242年に中国から持ち込まれ、現在の静岡市美和に種子が蒔かれたとされています。
川根本町のブランドとなっていますが、島田市川根町の特産品でもあります。日本茶業界で初めての天皇杯を受賞し、多くの品評会で評価された川根茶は、地元だけにとどまらず、全国お茶屋さんから格別の扱いを受けて、栄誉ある高級茶として認められています。
さらに近年では、海外からの注文も増えています。この産地は年間降水量が約3,000㎜と非常に多く、またその分日照時間も短いです。日中の暖気と夜の湿った冷気により寒暖差が激しく、この自然の組み合わせが川根茶の茶葉を育んでいます。この自然環境が稀有であるために、高級茶として流通しています。
川根茶の美味しさの秘密
もちろん希少価値が高いだけでは有名ブランドにはなりえません。美味しさあってこその三大ブランド茶です。上記の独特の気象条件は、茶葉に潤いをもたらし、苦みや渋みを抑制し、旨味を蓄えさせます。直射日光を過剰に浴びると、葉が乾燥し、潤いがなくなってしまい、結果として苦みが強くなります。美味しさの秘密は土壌にもあります。刈られたススキが茶園に敷かれ、酸性度の低い土壌となっています。
これにより微生物による循環活動が促進され、栄養分の豊富な土壌となります。いわゆる有機農法ですが、ここでは伝統的に実施されています。茶草場農法と呼ばれており、世界農業遺産にも認定されています。いくら原料が良くても素晴らしいお茶にはなりません。一般的な、香味成分を凝縮させる製茶をこの川根茶にも行うと、せっかくの素材の良さが活かしきれません。
そのため、程よく控えめに蒸し、揉み、乾燥をします。これは明治時代に考案され、川根揉みきり流と呼ばれています。そしてこの技術は現代ではこの工程をコンピューターで管理されています。機械化されることで、安定した品質を供給できるようになっています。
川根茶を美味しく淹れるコツ
川根茶の淹れ方にルールはありません。個人の嗜好に合わせるのがベストです。とはいえ、おすすめの淹れ方はあります。お湯の温度は60℃から80度、沸騰湯ではありません。特に水道水を使う場合は沸騰させて塩素を飛ばす必要があります。市販のピュアウォーターでしたらそこまで気にする必要はありません。渋みが苦手な方は温度を少し低めにした方がいいでしょう。
また硬水を使用すると、渋み成分と相殺されます。一人当たり80㏄以下で、茶葉は5g、3~5人分で7~10gがちょうどよい濃さです。温めた急須に茶葉とお湯をいれて1分ほど蒸らし、茶碗も予め温めておきます。人数分の茶碗に回し注ぎ、最後の一滴まで入れたら完了です。個包装された三角ティーバッグも市販されていますし、水出しタイプもあります。
まとめ
川根茶は素晴らしい伝統的な高級茶ですが、必ずしも入手困難というわけではなく、ネット市場でも気軽に購入できます。少しでも興味があれば、ぜひ一度飲んだほうがいいでしょう。今回は触れませんでしたが、栽培農家によっても品質や味のスタイルは違います。少しずつ試してみて、どれがお好みか探してみるのも面白いかもしれません。