茶葉を購入しようとした時に、パッケージに「浅蒸し茶」や「深蒸し茶」といった文字が書かれているのを見たことはありませんか?実際に、どう違うのか、同じように淹れていいのか、疑問に思ったことがある方も多いと思います。今回はとくに浅蒸し茶の魅力を、味や淹れ方の違いを含めて、詳しくご紹介します。
浅蒸し茶とは
浅蒸し茶とは、その名の通り浅く蒸した茶葉のことです。緑茶を作る工程には、一番始めに「蒸す」という作業が入ります。これは、収穫した茶葉の酸化を止め、緑茶本来の緑色を残すための工程です。この蒸しの過程でかける時間が短ければ浅蒸し茶、長ければ深蒸し茶になります。
実際にかける時間は、浅蒸し茶で10~30秒ほど、深蒸し茶は1分以上になります。なお、一般的な煎茶は中蒸し茶とも呼ばれ、蒸し時間は30~1分ほどです。浅蒸し茶の蒸し時間の短さは、元々は茶葉の生産地特有の事情がありました。江戸時代から、お茶の生産は日照時間の短い山間部で行われていました。日光が当たる時間が少ないため、茶葉は厚みがなく柔らかく、長く蒸すと脆く崩れやすくなってしまいます。
そのため、蒸し時間を短くする「浅蒸し」の製法で作られたのです。茶葉は浅く蒸すことで、本来の青臭さ、お茶の香りが強く残ります。淹れたお茶は、黄色に近い水色になりますが、香りと共に、お茶本来の旨味を味わえるのが特徴になっています。
深蒸し茶との違い
浅蒸し茶は、針のように細くとがった茶葉が特徴的です。深蒸し茶は長く蒸すことで、葉がもろく柔らかくなり、粉末のような茶葉も含んでいます。お茶として淹れると、浅蒸し茶は黄金色ともいわれる透明感のある薄い黄色の水色になり、深蒸し茶は濁った濃い緑色になります。そして、淹れた時の一番の違いは香りです。深蒸し茶は、長い蒸し時間の間に茶葉本来の香りが抜けてしまいます。そのため生産の工程に火香という火入れの工程があり、芳ばしい香りを、あえてつけています。
反対に、浅蒸し茶は、お茶本来の青臭さの残る、すっきりとした清涼感のある香りです。深蒸し茶がだれでも簡単に美味しく淹れやすいのにたいして、浅蒸し茶は、お茶本来の香りと色を楽しむためには、淹れる際にも時間と気遣いが必要なお茶になっています。
緑茶らしい渋味と清涼感を感じられる味わい
浅蒸し茶は前述のように、金色がかった薄い黄色に近い色で、透明感のある水色のお茶です。味は、スッキリとした中に少しの渋みが効いた、お茶本来の味わいです。ほかのお茶に比べて、茶葉本来の香りと旨味を堪能できるのが、一番の特徴といえます。
浅蒸し茶に含まれる栄養素
浅蒸し茶は、ほかのお茶よりもカテキンの含有量が多いのが特徴です。カテキンは高い温度で抽出されやすくなるため、浅蒸し茶を熱いお湯で淹れると、苦みが強くなってしまいます。また、カフェインの含有量も、ほかのお茶に比べて多めです。そのため、生茶葉の持つ青臭さ、清涼感のある香りが残っているのです。
浅蒸し茶の美味しい淹れ方
浅蒸し茶は、茶葉が硬く仕上げられているため、お茶が抽出されにくい、という点に注意が必要です。美味しい淹れ方は、茶葉5gに対して、180mlのお湯を用意します。お湯は少しぬるめの80度ぐらいがちょうどよい温度です。茶葉にお湯を注いだら90秒ほど蒸らし、抽出したら完成です。
ほかのお茶であれば、二番煎じは美味しさが薄れてしまうこともありますが、浅蒸し茶の場合、二番煎じでも美味しく飲めるのも特徴になっています。また、水出しで淹れる冷茶も美味しい淹れ方です。低温でじっくり抽出することで、苦みが出にくくなります。スッキリとした味わいは、暑い季節にも最適です。
まとめ
今回は、お茶本来の味わいが楽しめる、浅蒸し茶についてご紹介しました。お茶の種類によって、美味しく飲めるシーンに違いがあるのが分かります。それぞれの茶葉の特徴にあわせた使い方、淹れ方でお茶を楽しんでみるのはいかがでしょうか。